メニュー

ピロリ菌の検査方法・除菌治療

[2022.04.22]

前回、ピロリ菌がいることで胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍が多くなるとブログに書きました。

今回は、ピロリ菌の検査・除菌の方法について説明したいと思います。

 

・ピロリ菌の検査方法について

ピロリ菌の検査には、いろいろな検査方法があります。

①尿素呼気試験

②迅速ウレアーゼ試験

③抗ヘリコバクターピロリ抗体(血液・尿)

④ヘリコバクターピロリ抗原検査(便)

⑤培養法

あとは、病理組織検査の時にピロリ菌が顕微鏡で見つかることもあります。

※ピロリ菌の検査は、胃カメラをすることが必須となっています。ピロリ菌の検査のみご希望の場合は自費検査となることがあります。

 

①尿素呼気試験

ピロリ菌のもつウレアーゼという酵素を利用した検査法です。ピロリ菌は酸性の環境下でも生きられるように尿素を分解してアンモニアを合成する酵素をもっています。

13C(炭素の同位体。通常炭素は原子量が12ですが、原子量13の炭素が存在します。化学で習ったのを覚えていますか??)で標識された尿素を内服する検査です。ピロリ菌がいれば、尿素は二酸化炭素とアンモニアに分解され、13Cを含んだ二酸化炭素(CO2)が血中を通って、肺から呼気中に排出されます。ピロリ菌が胃内にいなければ、13Cを含んだ尿素は分解されないため、呼気中に13Cを含んだ二酸化炭素は出ません。

ピロリ菌の検査の中では最も感度の高い検査と言われています。ピロリ菌の除菌後の判定に使用されることが多い検査です。

当院では4時間の絶飲食で来院していただければ、検査が可能です。ただし、プロトンポンプインヒビター(PPI)という種類の胃薬や抗生物質の内服をしていると、ピロリ菌がいても陰性の結果となることがあり、2~4週程度、薬を中止する必要があります。

 

②迅速ウレアーゼ試験

迅速ウレアーゼ試験もピロリ菌のウレアーゼという酵素を検出する検査法です。胃カメラと同時に行う検査です。胃の生検を行い、胃粘膜を採取し、試薬と反応させて検査を行います。採取した胃粘膜にピロリ菌が存在すると、試薬中の尿素がウレアーゼで分解され、アンモニアが生じます。アンモニアはアルカリ性ですので、pHが上昇し、試薬の色が変化します。色が変われば陽性、つまりピロリ菌がいると判定されます。胃カメラと同時に行えて30分程度で結果がわかる利点があります。この検査も、胃酸を抑えるPPIや抗生物質を内服していると結果が正しく出ません。採取する胃粘膜の部位によっても結果が変わってしまう検査です。

 

③抗ヘリコバクターピロリ抗体

抗体検査は、ピロリ菌の感染により上昇する血液中または尿中の抗体を検出する方法です。過去の感染でも抗体は高くなるため、ピロリ菌の除菌後の判定には原則として使用できません。つまり、抗体検査が陰性であれば、感染していないと言えますが、陽性の場合は「現在もピロリ菌がいる状態」と「過去にピロリ菌がいたが、現在はいない状態」の2通りが考えられます。除菌歴や胃粘膜の状態などを考慮し、総合的な判定が必要です。この検査の利点と言えば、なんといっても胃薬や抗生物質の影響を受けない点です。普段から逆流性食道炎でPPIを内服している人などは、薬を中止せずに検査ができるので、とりあえず採血で調べてみましょうとなることが多いです。

尿中抗体検査は、採血が必要ないため、痛い思いをせずに検体の採取が可能ですので、中学生の健診などで使われることがあります。しかし、偽陽性も多いとされており、診断には注意が必要です。尿中抗体検査は除菌後の判定にはしようできません。

血中抗体検査も感染しているのか感染していないのか、白黒はっきりしないグレーゾーンが存在します。抗体価10以上であれば陽性、3未満であれば陰性の可能性が高いですが、4~9の人はピロリ菌が感染している人もいれば感染していない人もいます。その場合は、尿素呼気試験や便中抗原など別の検査も追加したほうがよいと考えます。

 

④ヘリコバクターピロリ抗原検査(便)

胃の中にいるピロリ菌は、便中にも出てきます。便中のピロリ菌を検出する検査です。この検査も採血が必要ないため、小児のピロリ感染を調べるのには良い検査と言えます。

この検査も、内服薬の影響はありますが、迅速ウレアーゼ試験や尿素呼気試験よりも影響は少ないと考えられています。

⑤培養法

胃カメラの生検組織中のピロリ菌を培養して検出する検査です。この検査のメリットはなんといっても薬剤感受性(抗生物質の耐性がないかどうか)を調べられることです。ピロリ菌の除菌治療には抗生物質の内服が欠かせませんが、最近クラリスロマイシンという抗生物質に耐性をもつピロリ菌が多くなっていることがわかっています。培養法では、どの抗生物質に耐性があるかが調べられるため、除菌治療の薬剤を選択する際に参考になる場合があります。

 

・ピロリ菌の除菌治療について

ピロリ菌の除菌治療は、薬を1週間のむだけです!

胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質の合計3種類の薬を7日間内服します。なんと1回5錠内服もする必要があります・・・でも1週間だけなので辛抱して飲んでください。

商品名をあげると、ボノサップ・ボノピオン、ランサップ・ランピオン、ラベキュア・ラべファインといった薬があります。どの商品も、3種類の薬が1つのシートにセットされており、朝と夕が色分けされ、薬の飲み間違えや、飲み忘れを防ぐように作られています。

検査でピロリ菌が陽性と判明したら、通常はまず一次除菌という治療を行います。抗生物質はクラリスロマイシンとアモキシシリンという2種類の抗生物質を使用します。商品名で言うとボノサップ、ランサップ、ラベキュアが一次除菌薬です。

勘のいい方は、一次があるんだったら、二次もあるの?と思われると思います。そう、二次除菌薬もあるんです。

一次除菌の除菌成功率は8割程度と報告されています。5人中1人は除菌が失敗に終わってしまします。一次除菌不成功の場合に行うのが二次除菌です。

抗生物質がメトロニダゾールとアモキシシリンの2種類に変わります。二次除菌の成功率は9割と言われているので、二次除菌まで行うと、一次除菌失敗の20%の人のうち、18%が除菌成功するということになりますので、80 + 18 = 98%の方が二次除菌までに除菌成功となります。

ピロリ菌を除菌することで胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発が減り、長期的にみると胃がんの発生が1/3程度に減ることが報告されています。

発がんがゼロになるわけではないので、除菌後も定期的な内視鏡検査は必要です。

 

除菌治療の際は、副作用にも注意が必要です(それほど多くはないので、過剰な心配は無用です)。下痢をする人や蕁麻疹が出る人がいますので、薬を飲み始めて異常を感じれば、早めに処方医に相談していただく方が良いと思います。

 

ピロリ除菌のおかげで、最近は胃潰瘍や十二指腸潰瘍からの吐下血の患者さんは、かなり減っている気がします。私が消化器のトレーニングを積んでいるころは、出血性胃潰瘍の緊急内視鏡検査で夜間に呼び出されることがしょっちゅうあり、ドキドキしながら止血の処置をしていましたが、最近は緊急内視鏡はめっきり減っているようです。胃がんの患者さんも、今後大幅に減ってくると思います。

ピロリ菌を飼っているかどうかわからないというあなた!是非検査をうけてください!もしピロリ菌がいたら、積極的に除菌することをおすすめします。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME