メニュー

意外と怖い便秘症

[2021.12.13]

当院でも便秘で通院されている患者さんが大勢いらっしゃいます。

たかが便秘と思われるかもしれませんが、実は便秘は命にかかわる病気かもしれません。

便秘とは、

「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」

を言います。毎日排便があっても量が十分でない、排便困難感や残便感などがあっても便秘です。

 

医師でも、意識している人は少ないと思いますが、便秘症には診断基準というものがあります。

「排便の4分の1超の頻度で、以下のa~fのうちの2項目以上が当てはまる」場合、便秘と診断します。

a.強くいきむ必要がある。

b.兎糞状便(コロコロした便)または硬便である。

c.残便感を感じる。

d.直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。

e.用手的な排便介助が必要である。摘便・会陰部圧迫など。

f.自発的な排便が、週に3回未満である。

 

当てはまる方、割といらっしゃるのではないでしょうか。

 

便秘は女性の病気と思われている方も多いかもしれませんが、男性の便秘症も年齢とともに増加し、80歳以上では男女差がなくなってきます。年齢別の便秘の頻度が下のグラフです。80歳以上では10%強の人が便秘で悩まれています。

おそらく、腸も筋肉でできていますので、加齢により腸自体の筋肉が衰えることで腸の動きが悪くなることが原因と思われます。また、排便時には腹筋や横隔膜などの腹圧をあげる筋肉も重要な働きをしているため、お腹周りの筋力低下が便秘につながっている可能性があります。

その他にも、大腸がんや脳梗塞やパーキンソン病、糖尿病など、年齢とともに増えてくる病気が便秘になることがあります。

また、高齢者は病気の治療のため、薬を服用していることも多く、薬剤性の便秘症の割合も多くなっています。

高齢者で多くなる便秘ですが、そんな高齢者の便秘で気を付けたいのが、心血管イベント、つまりは心筋梗塞や心不全、脳卒中です。

便秘の方は、排便時のいきみによる血圧上昇など、知らず知らずのうちに心臓や血管に負担をかけていることがあるのです。下の図に示すように、高度の便秘(ピンクの線)、中等度の便秘(青の線)の人は、軽度の便秘や便秘のない人と比べて、心血管イベント(心筋梗塞や心不全の発症)が多いと報告されています。

また、別の報告では、4日に1回以下しか排便がない人は、排便が毎日ある人より心血管疾患での死亡率が1.77倍、脳卒中の死亡率が2.43倍高いと言われており、慢性便秘症の人は便秘がない人より生存率が低いというデータもあります。

そんな命にかかわる便秘ですが、便秘を解消するにはどうすればよいでしょうか。

ずばり、食事療法・運動療法が大切です。

食事に関してはなんといっても「食物繊維」です。食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水溶性食物繊維はペクチン・グルコマンナン・アルギン酸・難消化デキストリン・オリゴ糖などがあります。水溶性食物繊維は水に溶け、ヌルヌル・ネバネバとした状態になります。便の水分量を増やして柔らかくしてくれたり、善玉の腸内細菌のエサになることで腸内環境を整えてくれる効果があります。

ペクチンはオクラや山芋、納豆などのネバネバした成分で、リンゴなどの果物にも多く含まれます。グルコマンナンはこんにゃく、アルギン酸は寒天・わかめ・ひじきなどの海藻に多く含まれます。

難消化デキストリンは、でんぷんから人工的に作られる糖類です。糖や脂肪の吸収をおさえる作用があり、身近なところでは「体すこやか茶W」というお茶や「リベラ」というチョコレート、レタス2個分の食物繊維で有名な「イージーファイバー」などの健康食品にも使用されています。

不溶性食物繊維はキノコ類や野菜、豆類に豊富に含まれます。消化されずに大腸まで届くため、便の容積を増やし、腸の壁を刺激することで、大腸の動きを活発にしてくれます。ただし、不溶性食物繊維は、とりすぎると便が硬くなってしまう可能性もありますので取りすぎには注意が必要です。実際、腸に狭いところがある方や腸閉塞を起こしたことのある方には、キノコ類や海藻類はとらないように指導しています。硬くなった便が詰まってしまうことがあるからです。

腸がせまくて便秘になっている人は、便秘解消のためにと思って食べている野菜やキノコが逆に悪影響となることがあるのです。腸がせまい人は、便秘と下痢を繰り返すという症状が特徴的ですので、便秘と下痢を繰り返すという方は、不溶性の食物繊維は避け、早めに大腸検査を受けておいた方がよいでしょう。

それ以外にも、下記の項目のどれかに当てはまれば大腸検査を受けておくことをお勧めします。

  • 50歳以上で大腸癌スクリーニング歴がない
  • 便の直径が細くなった
  • 血便
  • 鉄欠乏性貧血
  • 体重減少
  • 腹部にしこりが触れる
  • 最近発症した便秘・急激な変化  
  • 大腸の病気をしたことがある・家族に大腸がんがいる  

大腸検査は大変そうだし、便検査で問題なかったから大丈夫、と考えている人は要注意です。

便潜血検査は、検出感度が低く、進行大腸がんがあっても6割程度は見逃してしまいます。ただ、便検査は、検出感度が低くても、手軽な検査ですので、何回も受けることで、検出率は高くなりますので、便潜血検査は定期的に受けてこそ意味のある検査です。

便潜血陽性で受診され、内視鏡検査をするとかなり進んだ大腸がんだったという話もまれなことではありません。上に書いたようなものにあてはまれば、是非検査をご検討ください。

少し話が脱線してしまいましたが、食事のまとめです。

「水溶性食物繊維をしっかりとり、適切な量の不溶性食物繊維をとることが重要です。」

あとは、油を制限しすぎても便秘になることがありますので、油の過度な制限はやめましょう。

 

そして便秘に効く運動療法ですが、それはずばり「ウォーキング」です。

ウォーキングに限らず、軽めの有酸素運動で良いと思います。そして、大事なことは運動後にリラックスする時間を作ることです。

運動中はどちらかというと交感神経が働き腸の動きは抑えられています。運動後にリラックスしていると副交感神経が働き、腸の動きが活発になり、便意を催しやすくなります。

激しい運動は交感神経が働きすぎるため、逆効果になることがありますので、軽めの運動を20~30分程度がオススメです。

 

食事や運動に気を付けても便秘が解消しなければ、薬に頼る必要があります。

酸化マグネシウムに代表される便を柔らかくする薬やセンノシド(市販ではコーラックやセンナ)のような大腸刺激薬(大腸を動かす薬)が以前より主流でしたが、ここ数年で新しい便秘薬が次々と登場しています。

便秘に使える薬の選択肢は増えましたが、どの薬が合うのかは人それぞれで、正直なところ試してみなければわかりません。便秘で困っている方は、是非相談に来てください。すぐには、ベストな薬が見つけられないかもしれませんが、排便の状態やおなかの症状を伺いつつ、一緒に最適な薬を見つけていきましょう。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME