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胃カメラを上手においしく飲むには?

[2021.10.30]

アルコールを飲むのは好きな方も多いと思いますが、胃カメラを飲むのが好きな方はあまりいませんよね。

(うちのスタッフには内視鏡を飲むのが大好きという変わった人もいます・・・。そういう私も胃カメラを飲むのは嫌いではありません。以前のブログでも書いたことがあります。)

胃カメラをおいしく、上手に飲むにはどうすればよいでしょうか。

内視鏡専門医が教える胃カメラの上手な飲み方をお教えします。

 

 

①まずは咽頭麻酔が重要です!!

内視鏡医もできるだけ、オエッとさせないように胃カメラを丁寧に入れていきますが、どうしてもオエッとさせてしまうこともあります。

胃カメラ中にオエッとなりやすい部位というのがあります。

まずは胃カメラが口の奥から食道に入るまでです。舌根と言われる舌の根元は敏感な部分であり、何かが触れるとオエッとなりやすい部分です。そして、咽頭(のど)・食道の入り口のところまでが、敏感な部位で痛みを感じやすくなっているため、オエッとなることが多いのです。食べ物が通るときにオエッとならないのに、なぜ胃カメラが通るときにはオエッとなるのか不思議ですが。オエッとなるのは体の防衛本能と思われます。

鼻からの胃カメラが楽だといわれているのは、オエッとなりやすい舌根にカメラが当たりにくいためです。

私も気を付けて胃カメラを挿入していますが、のどにカメラをいれたときに患者さんに「オエッ」と言われるとできるだけ素早く、食道の奥までカメラを進めます。なぜそうするかというと、食道で敏感なのは入り口だけで、奥の方まで入ってしまうと感覚が少し鈍いため、オエッとなりにくくなるからです。

口からのどを攻略してしまえば、検査の半分以上済んでしまったようなものです。

口の中から食道までで胃カメラをおいしく(のど越しよく)飲むコツは、なんといっても大事なのが「のどの麻酔」です。

のどの麻酔の方法には、色々なやり方がありますが、一般的なのは麻酔のゼリーをのどに溜める方法と思います。麻酔液でうがいをする病院もあります。麻酔をスプレーするところもあるでしょう。

麻酔のコツはできるだけのどの奥の方に、麻酔の薬を溜めることです。麻酔薬は飲んでも問題ないことがほとんどですので、少し飲んでしまっても構いません。舌の先や口の中に麻酔を効かすよりは、できるだけ「のど」「舌の根元」に麻酔を溜めて、のどの奥にしっかり麻酔を効かせてください。ガラガラうがいをするときに水を溜めるところに麻酔の薬を溜めましょう。

可能であれば、カメラを入れられる前に、先生に「スプレーの麻酔を追加してもらえますか?」と聞いてみましょう。苦いですが、スプレーの麻酔薬は麻酔の濃度も高いので、ゼリーの麻酔だけで十分でなかった場合は、上乗せ効果を期待できます。

麻酔薬の使い過ぎはリドカイン中毒といって、痙攣や不整脈を起こすことがあるため、注意も必要ですが、通常使用する量では問題ないことがほとんどです。(私はこれまでリドカイン中毒になった患者さんは見たことがありません。)

 

②すこし顎を突き出した姿勢で。顔は真正面からやや地面の方向に。

カメラをうける姿勢も重要です。顎を引きすぎるとのどが狭くなってしまい、胃カメラがのどに当たりやすくなります。少し、顎を突き出した姿勢がよいでしょう。この姿勢をsniffing position(スニッフィングポジション)といい、和訳すると「嗅ぐ位置」となります。顔の前に置いた花などを匂う姿勢を想像してみてください。少し顎を突き出して匂いに行くのではないでしょうか。下の写真のような少し顎を出した姿勢がベストです。

また、検査中はつばを飲んだらむせてしまうため、口の中のつばを外に垂らしやすいように少し顔を下向きに、地面のほうを見るようにするとよいでしょう。

そして、カメラが入るときにはのどを動かさないようにしてください。つばを飲む動作をすると、のどが非常にダイナミックに動きますので、内視鏡医がのどに当てないように慎重にカメラ進めているのに、のどのほうからカメラにぶつかってくることになり、結果としてオエッとなってしまいます。先生が「ごくっと飲んでください」と言ったときだけ、飲む動作をするようにしてください。のどの力が抜けていれば、嚥下動作をしなくてもカメラはスッとのどを越えてくれますので、力を抜くことが一番重要です。

 

③検査中は無心に。

胃カメラがのどを越えた後も、のどに硬い管が入っている違和感があります。

「のどが痛い、のどが痛い」と、のどに気が行ってしまうと、余計に痛みを感じてしまいます。胃カメラが入ってしまったあとは、できるだけ無心になるように心がけます。肩や首に力が入ってしまうと、のども閉まってしまい、違和感が強くなります。

そこで、オススメするのは呼吸方法です。鼻で大きく吸って、ゆっくり口から吐く深呼吸を繰り返すと力が抜けやすいです。

また、しんどいと眉間にしわを寄せたり、目を閉じてしまいがちですが、できれば目を開けて、遠くをボーっと見たり、見れるのなら検査のモニター画面を見ると楽に受けられます。

あとは、カメラが入った後も口の中につばが溜まってきますが、できるだけ飲まずに、口から出すようにしてください。

つばを飲む動作自体が、のどに意識を向けさせてしまいますし、麻酔のせいでのどの感覚が鈍っているため、気管のほうに唾液が入ってしまい、盛大にむせてしまう原因となるからです。

禅僧のように無心を心がけましょう。

 

 

④胃が突っ張るときも深呼吸。

胃カメラが、胃の出口のほうや十二指腸に進んでいくときが2番目にしんどいポイントです。胃カメラを十二指腸に挿入するには、胃カメラをどんどん押して入れていくしかありません。その時、胃はかなり伸ばされています。この胃が伸びる感覚は苦しいものです。何とも言えない感覚なのですが、「胃が熱くなるような感覚」に私は感じました。

この時にも、深呼吸を心がけてください。胃が押されるため、ゲップが出そうにもなりますが、落ち着いて鼻から吸って口から吐く呼吸を繰り返し、ゲップもできるだけ我慢します。

また、大きく息を吸うと、横隔膜が下がるため、内臓の動く範囲が狭くなり、胃の伸び方が少しマシになる可能性もあるかもしれません。(これは未確認情報です。大腸カメラでは深呼吸は非常に有効です。)

深呼吸をすれば、気は紛れやすいですが、正直、この胃の突っ張り感に関しては十二指腸に入るまで辛抱するしかないところです。十二指腸に入ってしまえば、それ以上は胃カメラを押すことありませんので、苦痛もマシになります。

太いカメラではこの胃が伸びるときの苦痛が強いため、当院では細いカメラを採用しました。

 

⑤ゲップは可能な範囲で我慢する。

胃の中をくまなく見ていくには、胃を空気で広げてあげる必要があります。胃カメラから空気が送られ、胃は風船のように広がりますが、この時にゲップが出やすくなります。ゆっくり深呼吸をし、おなかに力をいれたり、少し顎をひくことでゲップを我慢しましょう。

ゲップが出てしまうと、また空気を入れる必要があり、検査の時間が長くなるため、苦しい時間も長くなってしまいます。

 

⑥鎮静剤を使用するのが一番かも。

これまで書いたようなところが実践できれば、だいぶ楽に検査を受けられると思いますが、やはりしんどい思いをしたくなければ、鎮静剤を使って、眠ってしまうのが一番です。点滴を入れないとだめなことや、検査が終わってからしばらく休まなければいけないこと、検査後に運転ができないこと、鎮静剤の副作用(効きすぎると、呼吸が浅くなる、血圧が下がるなどがでることがあります)など、デメリットもありますが、鎮静剤を使用することで、これまで書いたことを何も気にしなくても、楽に検査を受けることができます。

 

⑦胃を気遣って生活をする。

最後に、胃カメラを飲む前からの注意点です。

胃カメラの検査は病変があれば、詳細な観察が必要となるため、検査時間がどうしても長くなってしまいます。

胃カメラを楽に受けるには、胃を健康に保つ生活習慣も重要です。暴飲暴食を避け、刺激物やアルコールは控えめに、ストレスを溜めない、禁煙することも心がけていただくとよいと思います。胃の不調があれば、症状がひどくなる前に受診しましょう。

 

胃カメラを楽に受けるコツを知り、少しでも皆さんの検査に対するハードルがさがることを期待します。できれば胃カメラを好きになってもらえたら内視鏡医としてこれほど嬉しいことはありません。

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