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内視鏡検査に対する思い

[2021.09.29]

私が消化器内科医になったきっかけは、研修医の時に感じた内視鏡の面白さでした。

私の1年上の世代から現在まで、研修医は色々な診療科を数カ月ごとにローテーションして、内科や外科だけでなく、小児科や産婦人科、精神科など、幅広く勉強・研修をするのですが、私が研修医になり、ローテーションの最初の診療科が消化器内科でした。正直なところ、学生の頃は、消化器内科にはあまり興味を持っていませんでしたが、2年間で色々な診療科を回ってみて一番面白いと思ったのが消化器内科でした。なんといっても内視鏡にとても興味を持ちました。

消化器内科の指導医の先生がとても内視鏡がうまく、その頃はまだ一部の施設でしかできなかった粘膜下層剥離術(ESD)という早期がんの内視鏡治療をされていました。厚さ数ミリしかない胃粘膜を筋肉の層を残し、丁寧に粘膜を剥離し、がんを切除していきます。研修医になりたての頃は、本当に何もわかっておらず、内視鏡治療の難しさも全く分かっていなかったと思いますが、胃カメラ1本で、こんなことができるのかとびっくりした覚えがあります。

内視鏡って見ているとそんなに難しそうに見えないのですが、胃の模型やTVゲーム感覚で練習可能なシミュレーターで内視鏡の練習をしたり、実際に患者さんの胃カメラをしたりすると、全然思う通りにカメラを動かすことができません。「えっ!?めっちゃ難しいやん、これ。」ってなります。自由自在にカメラを扱う指導医の技術の凄さを改めて感じさせられました。そして、「いつかあんな風に上手くなれたらなぁ」と思うようになりました。

 

内視鏡の良さは、技術の奥深さだけでなく、なんといっても「見れば、わかること」です。CTやMRIなど医療機器は進歩し、診断の役に立っていますが、実際に病気(病変)を見て診断するというのは皮膚科と内視鏡検査ぐらいではないでしょうか。実際に見ることで、胃痛の原因が胃潰瘍だったり、アニサキス症(胃壁に噛みつく寄生虫)だったりと、原因がはっきりすれば確実な治療につなげやすいですし、患者さんも画像を見ると納得してくれます。白黒画像のレントゲンや超音波画像と比べ、フルカラーの内視鏡画像はやはり説得力が違います。(慣れてくると超音波検査も白黒画像ではありますが、奥が深くとても面白いんですけどね)

内視鏡治療の進歩もあり、診断から治療まで一貫して行える内視鏡がとても魅力的に思い、消化器内科を専門とすることを決めました。

初期研修の2年が終わり、専門を消化器内科に決めると、医師3年目より、本格的な消化器内科の勉強が始まりました。最初は胃カメラから、そして大腸カメラと練習をしていきます。私が消化器内科の勉強を始めたころ、まだ病院では麻酔(鎮静剤)を使った胃カメラ・大腸カメラはほとんど行っていませんでした。ほとんどが麻酔なしの口からの胃カメラで、「胃カメラ=しんどい検査・えずいて苦しい検査」「大腸カメラ=痛い検査」だった時代です。当時、下手くそだった私の検査をうけていただいた患者さんたちには本当に申し訳なかったですし、心より感謝しています。忙しい毎日でしたが、少しでも早く上手くなって、患者さんを苦しめないようにと、暇があれば内視鏡室で胃や大腸の模型を相手に練習をしていたことを思い出します。

最近では、だいぶ減ってきましたが、私が消化器内科になりたての頃は進行胃がんの患者さんや胃潰瘍からの出血の患者さんがとても多かったように思います。ピロリ菌の検査や除菌のおかげか、胃がん・胃潰瘍は減ってきています。しかし、今でも進行胃がんで見つかる方がいます。また、大腸がんに関しては最近増えてきている病気で、進行した大腸がんを見る機会は確実に増えてきています。

内視鏡医として、進行がんに出会うと本当に残念な気持ちになります。なぜなら、進行がんで見つかる方の、ほぼ全員が、これまで胃カメラ・大腸カメラを受けたことがない人なのです。「あと数年早く検査を受けていただいていたら・・・」と、何度思ったことでしょうか。

当院に通院中の患者さんでも、胃カメラ・大腸カメラはしんどいから受けたくないと言う方が結構います。「見ればわかる」のが内視鏡検査ですが、逆に言うと「見れないとわかりません」。

以前は胃カメラは苦しい、大腸カメラは痛い検査だったかもしれません。しかし、今は違います。内視鏡検査機器も進歩し、より細く、より高画質で検査が出来ますし、どこの病院でも、現在は麻酔を使った内視鏡検査が主流になってきています。

私は胃カメラ・大腸カメラの悪いイメージを何とか払拭したいんです。食わず嫌いをせずに、何とか検査を受けていただきたい、検査のハードルをできるだけ下げたい、といつも思っています。

鎮静剤を使えば胃カメラはしんどくない検査です。大腸カメラも腸の癒着などがない限り、痛くない検査です。

できるだけ多くの方に内視鏡検査を受けていただき、検査をできるだけ身近なものにしていただきたいです。定期的に歯科に通院するぐらいの感覚で、定期的に内視鏡検査を受けることが当たり前になるようになれば、進行がんで見つかる人をゼロにできるのではないかと思います。

何度も言いますが、

「胃カメラ=しんどくない検査」です。

「大腸カメラ=痛くない検査」なんです。

 

思い切って一度検査を受けていただくと、検査の不安はなくなりますよ。

 

あとは、大腸検査前の下剤が飲みやすくなれば、言うことないのですが、そこは各製薬メーカーに頑張っていただきたいところです。

(どうしても下剤が飲めないという方は胃カメラで胃や十二指腸に下剤を注入することも可能ですので、ご相談ください。)

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