大腸ポリープ切除について
以前に大腸ポリープはありふれた病気であるという内容のブログを書きました。
今回はそんなありふれた病気である「大腸ポリープ」の治療の話です。
大腸ポリープの切除方法には色々なものがありますが、大きく分けると、まずは外科手術と内視鏡治療に分けられます。
現在は内視鏡治療の進歩により、良性のポリープで外科手術することはほとんどなくなりましたが、以前は内視鏡で切除困難な大きいポリープは外科手術を選択することもありました。外科手術は開腹手術と腹腔鏡手術がありますが、現在は、大腸の手術のほとんど(95%以上)が傷が小さくて済む腹腔鏡手術となっています。最近になってさらに傷が小さく術後の回復の早いロボット手術を行う施設も増えてきています。
内視鏡治療にはポリペクトミー、大腸粘膜切除術(EMR)、大腸粘膜下層剥離術(ESD)、コールドスネアポリペクトミー(CSP)などの種類があります。
ポリープはスネアという輪っか状の器具を病変にかけて、縛って切るのですが、電気を流さずに物理的に切るのがコールドスネアポリペクトミーです。電気を流さないことで病変を焼かないので「コールド」と言います。逆に電気を流して切除する時を「ホット」ということもあります。
ポリペクトミーとEMRは電気を流して、ポリープを焼き切る手技です。ポリペクトミーは病変にスネアをかけて、通電してポリープを焼き切るだけですが、EMRは、病変の深部に生理食塩水などの液体を入れて、ポリープを持ち上げてからスネアをかけて焼き切る治療です。平べったいポリープの場合は、そのままではスネアがかかりにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入し、EMRを行います。
大腸粘膜下層剥離術(ESD)はスネアではなく、内視鏡用の電気メスを使用し、粘膜の下を少しずつ剥がしていく治療です。少しずつ剥がしていくことで、スネアがかけられないような大きな病変でも切除が可能です。
大腸ESDは高度な技術を要する手技であり、実施できる施設はまだ限られています。2009年に先進医療として承認され、2017年より保険適応となりました。大腸は胃や食道に比べると壁が非常に薄く、穿孔(腸に穴が開く)を起こしやすいことや臓器の形態上、内視鏡の操作性が悪いことなどが、手技の難易度を高くしています。大きい病変でも一括で切除でき、しっかりと病理診断が行えるのがESDのメリットです。(病理診断で、がんが取り切れているか、がんが粘膜の奥深くに入っていないかどうか、血管やリンパ管にがん細胞が入っていないかどうかなどを判断し、内視鏡治療だけで治療が終了できるのか、追加での外科切除が必要なのかを判断します。)
内視鏡治療の使い分けとしては、
- ポリペクトミー:茎のあるキノコ状のポリープ
- ESD:20mm以上のポリープ
- EMR:20mm以下のポリープ
- コールドスネアポリペクトミー:10㎜以下で癌の疑いがないポリープ
大まかに言うと上記のようになります。
当院では主にコールドスネアポリペクトミーを行っています。スネアで物理的にポリープを切除する手技であり、治療時間の短縮が図れること、穿孔や出血などの合併症が少ないことが利点です。当院では、大腸ポリープが見つかった場合、日帰りでポリープ切除を行っているため、できるだけ『安全性』を重視した治療を重要視しており、コールドスネアポリペクトミーを選択しております。通電をせずに、ポリープを切除することや病変の下に生理食塩水の注入を行わないことから、取り残しが一番の問題となりますので、がんが疑われる病変に対しては行わないほうがよいと言われています。当院では拡大内視鏡という、病変を100倍に拡大して観察できる内視鏡を使用し、ポリープの形態をしっかりと観察し、がんの可能性がほとんどないと診断した上で、治療を行っております。出血のリスクが高い病変や悪性の可能性のある病変の治療は、合併症やがんの再発などで患者様のデメリットとならないように総合病院での精密検査・治療をお勧めしております。